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転職をどうするか!?



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フィナンシャル・タイムズ 2009年2月6日初出 翻訳gooニュース) フランクフルト=ラルフ・アトキンス、東京=デビッド・ピリング、ワシントン=クリシュナ・グハ

デンマークの看板制作会社「ノンビエ」のゼネラル・マネージャー、ラース・ノンビエさんは、世界的な経済危機に自分なりに立ち向かう方法をみつけた。そっ くりそのまま、職場から完全追放したのだ。暗い不景気な内容の新聞記事は切り抜いて取り除く。会議の冒頭で危機の話をするのは禁止。「危機反対」シールを 顧客に配る。「もういい加減にしてくれ、と言わなくては」とノンビエ氏。

戦略的な価値から言えば、ノンビエ氏のこれはある意味で、世界中のどの政治家や中央銀行トップが考え出したものとも同じくらい有効だといえるだろう。オバ マ米政権は今週、8000億ドルの景気刺激策をめぐり予想外の苦戦を強いられた。中国政府は、農村部からの出稼ぎ労働者が大量に失職するだろうと発表し て、大規模な社会不安の亡霊を呼び起こした。そして欧州の政治家たちは、米国の政治家と同じで、経済の安定回復にあたって全く無力な姿をさらしていた。

すでに実施されている施策の大々的な効果は、まだ見えにくい。世界全体では2兆ドル(約180兆円)規模に上る景気刺激策や、公定歩合の大幅切り下げが次 々と実施されたが、まだほとんど成果を生んでいない。6日の統計によると、米国の失業者数は先月さらに59万8000人増加。ドイツの鉱工業生産は急降下 しており、国際通貨基金(IMF)はアジア経済の成長予測を下方修正した。

「金融部門や実体経済で様々な調整が行われているが、その規模や勢いはすさまじく、政策決定者がどんなに抑制しようと努力しても奏功していない」 イタリ アの銀行最大手ウニクレディトのエコノミスト、マルコ・アヌンツィアータ氏はこう言う。欧州中央銀行(ECB)のジャンクロード・トリシェ総裁は、昨年9 月から「危機が異常に激化している」と話している。

世界各国政府の対応は状況に「見合った」ものだが、将来の展望はあまりにも異常なほど不透明だとトリシェ総裁は指摘する。「今後の展開がどういう確率の法則で動いているのか、分からないのだ」

ひとつはっきりしていることがある。危機の中核にいるのは、銀行だ。信用市場で問題が発生してから18カ月たっても、「政策決定者たちは透明性や信頼を回 復できずにいる」とアヌンツィアータ氏。政治家たちは「近く、耐えがたきを耐えて決断する」必要が出てくると同氏は言う。厳しい決断をして、さらに国有化 を進めたり、不良資産を買い上げる「バッドバンク」を設置したり、今よりもはるかに幅広く保証を提供するシステムを作ったりする必要が出てくると言うの だ。

しかし金融セクターにおける信用の破綻はすでに、企業への信用提供など経済の生命線といえる部分に大打撃を与えている。「不十分な金融対策がもたらすリス クが高まっている。そしてそれに伴い、世界経済は長期的な成長低迷というぬかるみに足を取られてしまうというリスクも、高まっている」 ドイツ銀行のエコ ノミストは今週、こう警告している。

政策決定者の無力ぶりも、世界各地に広がっている。米政府が苦労に苦労を重ねる様子が日々、大々的に報道されているが、これはアメリカが国際的な重要課題 を決める国だからだ。アメリカの経済調整はまだまだ続くだろうという兆候が明らかになる中、景気刺激策をめぐる上院の駆け引きは激しさを増した。しかし政 策決定者は事態の激しい移り変わりについていくだけでも精一杯の様子。それは今週の欧州各地でも同じだった。

英中央銀行のイングランド銀行は政策金利をさらに0.5%切り下げ、315年の歴史で最低の水準に落としたが、その効果のほどには自信がもてない様子だっ た。おまけに先週の英国で最も猛威を振るったのは天候で、珍しい大雪のせいで9日、英国はぱたりと動かなくなってしまった。

一方のECBは、戦略を練り直していた。金利引き下げはひとまず小休止したが、トリシェ総裁言うところの「深遠なる熟慮」の末、少しずつ姿勢が変わってき ている。借り入れ費用をゼロにして、危機と戦うためこれまでにない道具を揃えていかなくてはならないと、そういう考え方に前よりも柔軟になってきているよ うなのだ。

現代ドイツでは、安定した経済成長は生まれつき当然の権利と考えられていた。しかしそのドイツでも、昨年11~12月2カ月平均の鉱工業生産指数が前月比 7%近くも低下。この間の政策決定者たちは、経営難の銀行を買収すべきか否かで懊悩していた(たとえば、すでに何十億ユーロもの信用保証で支えられている 不動産融資会社ハイポ・リアル・エステートなど)。

しかしベルリンやパリ、ロンドンといった欧州都市では、銀行関係者の報酬を抑制するほうが、手っ取り早い対策として選ばれている。欧州の政治家たちもオバマ米大統領をお手本に、過剰な報酬を厳しく批判しはじめた。

欧州連合(EU)の東端やさらにその向こうでも、危機は日に日に勢力を強めているようだ。ロシアでは、世界の経済危機から自国経済を守ってくれる原油収入 が期待できなくなってしまったせいで、事態は劇的に動いている。ウラジーミル・プーチン首相は銀行救済措置の第二段を承認。国内で広がりつつある危機への 対処法を再考した政府は、今年の国内総生産成長率をわざとゼロかマイナスに抑制することで景気を安定させ、外貨準備高を維持しようとしている。

一方のアジア。あちこちで火の手が上がる景気後退という山火事を前に、政治家たちがあまりにも無力だという最も典型的な国は、日本だ。12月の鉱工業生産 指数は前月比で10%近く下がったことが先週明らかになり、在庫率も失業率も急騰している。その状況を受けて、日銀は物価安定のために分別を飲み込み、紙 幣増刷という憎むべき手段に回帰。1兆円規模の銀行保有株買い取りを決定したが、市場を肩をすくめただけで、株価はわずかに下落した。

日本中で、大企業は次々と収入見通しを下方修正。対策として170億円をつぎ込もうという経産省の計画は、無意味に見える。投資銀行ドレスナー・クライン オートのピーター・タスカー氏は、前例のないほど厳しい企業業績の悪化によって、日本の高付加価値な製造部門がいかに外部からの需要ショック対して脆いか さらけだしてしまったと指摘する。日本の銀行は比較的、不良資産にさらされずに済んでいるだけに、「これは本当に不公平なこと」とタスカー氏は言う。「一 番激しくドンちゃん騒ぎをした連中こそ、一番ひどい二日酔いに苦しむべきなのに。日本はその間、自分の部屋でミネラルウォーターを静かに飲んでいたのに。 なのに今となっては、すさまじい頭痛に苦しむ羽目になってしまった」

日本でおきていることは、ほとんどアジア中で起きている。サブプライム騒ぎに巻き込まれたアジアの銀行はあまりなかったにもかかわらず、多くのアジア経済 は急降下から逃れることが出来なかった。サブプライムの打撃は貿易という形でアジア各国に入り込み、工業生産を破綻させ、消費者マインドを冷え込ませてし まったのだ。IMFは2009年のアジアGDP成長見通しをわずか2カ月のうちに4.9%から2.7%へ下方修正した。

パッと見では怖いものなしに思えていた経済も、危機を前に屈服させられている。17年連続で成長していたオーストラリア経済も、物価低迷が景気後退を予感 させる事態となって、420億豪ドルの刺激策を発表し、金利を1960年来最低水準まで引き下げた。シンガポール経済は成長率マイナス5%という、 1965年の建国以来最悪の景気後退に見舞われている。韓国の政治家たちは、まだ今年のプラス成長は可能だと主張しているが、IMFは同国の2009年 GDP成長率見通しをマイナス4%だとしている。

つまり、何もかももう終わりだということか? 経済危機に対して政治家がまだある程度の力をとどめている国は多くないが、中国はそのひとつだ。中国政府は 今週、予想を上回る2000万人もの出稼ぎ労働者(全体の15%)が職を失うとの推計を公表した。しかしそれでも、4兆元の刺激策を含めて政府が矢継ぎ早 に打ち出した一連の対策は、じわじわと浸透しているように見える。

北京のコンサルタント会社ドラゴノミクスによると、銀行の融資額は昨年10月の2000億元から12月には7700億元に拡大し、今月には1兆2000万 元に到達する勢いという。中国の温家宝首相はこのほどフィナンシャル・タイムズの取材に対して、必要とあれば中国政府はさらに先制的な抑止策に打って出る 用意があると話している。

それ以外でも、わずかな希望の兆しが少し見えてきたとエコノミストたちは言う。バークレーズ・キャピタルのジュリアン・キャロウ氏は、景気に対する信頼を 示す指標が、いくらか安定傾向を示していると言う。記録的に低い水準での安定ではあるが。「現時点では、相変わらず厳しいペースで悪化を続けている。しか し信頼度を示すデータを見ると、悪化のペースは速まっていない。ということはそろそろ変曲点に近づいているのかもしれない」

各国の中央銀行の努力は少なくともひとつ、事態の打開をもたらした。銀行間市場を含む短期金融市場では、ここ数週間でスプレッド(売値と買値との差)は急 激に縮小し、緊張が緩和された。またコマーシャルペーパー(CP)市場では民間貸付が復活している。その結果、3カ月物の貸出金利は下がり、その影響で実 体経済における借入金利も低下した。

ティム・ガイトナー米財務長官は9日ごろにも、銀行の不良資産保証などを含む包括的な金融再生策を発表する見通しだ。その中には何らかの形で「バッドバンク」も含まれるだろうし、住宅差し押さえを削減するための措置も発表されるはずだ。

この新再生策が説得力に欠けていた場合、オバマ政権は危機対策を成功させられるという期待をつぶしてしまう恐れがある。アナリストたちはそう懸念してい る。しかし金融再生策はムードを切り替えるための、良いきっかけではある。世界中のムードは明るくなるかもしれない。政策決定者たちは、政策協調のためロ ンドンで開かれる4月のG20に向けて準備を進めている。

しかしこうした対策がうまくいかなかったとしても、デンマークで開発された「危機否定」メソッドがある。ノンビエ社のこのメソッドは欧州全土に広まりつつ あるのだそうだ。ノルウェーからスイスに至るまで、各地から問い合わせがあるのだという。「全く想像もしなかった展開だ」とノンビエ氏は話している。
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